2023年 10月 30日
猫のアジソン病
私はそろそろアイスコーヒーからホットコーヒーに切り替えだした今日この頃です
最近妻の一言ブログが多かったのであまり獣医的とは言い難い日記が続いてましたので、ここらで真面目に書こうと思います
タイトル通り猫のアジソン病と思われるかなり稀な症例に遭遇したので、詳細を書ける範囲内で書いていこうと思います
まずアジソン病とは簡潔に言うと副腎から出るホルモンが少なくなってしまう病気です
副腎ホルモンが減少することにより様々な症状を引き起こします
今回の症例の仔は食欲不振、嘔吐、流涎などの症状が出ていて、血液検査ではナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルバランスの異常や腎不全が出ていました
この時点では腎不全を疑って治療していましたが、当院を訪れる前の他の病院での治療(詳細は諸事情により割愛させて頂きます)を聞くとひょっとしてと思う様な事があり念の為にACTH刺激試験という検査をしてみました
結果は数値の上ではアジソン病(とはいえクロに近いグレーといったところでした)でしたが、あまりにも稀な病気なので本当かなと思い検査会社の方に諸々質問してみたところ、検査会社の方も稀なので治療に対する反応をみて最終的に診断をして下さいと仰ってくれました
そこで入院中に投薬治療を開始したところ…なんとその日の内から食事を食べ出しました‼️
これにはビックリしたのですが、食事をしても涎が出てきて口をクチャクチャとして食べづらそうにしていました
そうこうしている内にまた食欲不振になったのですが粘り強く治療を続けた所、10日程でしっかりと食べ出して腎不全の数値も少し悪いながらも落ち着いてきました
腎不全とアジソン病の治療を飼い主様に行ってもらえたので退院をしてもらったのですが、私の方では判断しかねた涎の原因を調べてもらおうと思い他の総合病院を紹介させて頂きました
しかし総合病院に行く前日くらいに涎も止まりいつも通りの調子になったみたいで、飼い主様もいつものウチの仔ですと仰ってました
それでも念の為と紹介した総合病院に行って下さったのですが、そこでアジソン病ではないので薬を止める様に指示をされ腎不全の治療のみをする様に言われました
私は流石にそれはどうなのかと思い食い下がって総合病院の先生に連絡しましたが、諸々のデータを言うのみで違うの一点張りでした
飼い主様も薬を止めていましたが、4日程でかなり状態が悪くなり再来院されました
その頃にはまた涎が出る様になり、治療しているにも関わらず腎不全の数値もかなり悪化していました
実はアジソン病は薬を止めると症状が一気に悪くなり最悪死亡する事があります
すぐさま入院して治療を再開し経過をみました
幸いにも数日で直ぐに改善してきたのでアジソン病の薬を飲みながら、腎不全の治療も併用して退院となりました
その後は1ヶ月以上経ちますが病状は安定していてとても元気みたいでホッとしています
今回総合病院の先生は日々研鑽を重ねたなかで見解を述べられたのだと思います
そこに何の悪意もありません
寧ろ惜しみなく御自身の知識を注いで下さいました
その先生の論文一つで何千何万の命が救われるでしょう
かたや私はその様な先生方と比べてまだまだ未熟な獣医師です
しかも1人のまだ未熟な人間なので、体力的にも物理的にも精神的にもキツい事も多々あります
でも、それでも何千何万は無理でも自分の目の前の仔達になるべくしっかりと向き合っていきたいです
私の所に来た仔達の力に少しでもなれればと思っています
今回はかなり稀な症例でしたが、しっかりと向き合えたからこそ治療と診断が出来たんじゃないかと思えました
少しは成長したと思いたいなと思いますが、調子に乗らない様に精進していこうと改めて思いました
久しぶりに真面目に書いたので、最後に前回書くと宣言した妻に言い返したシリーズを少しだけ書きます
妻「ホント人を見る目が無いよね」
私「だからアナタを選んだんだ!」
妻「………」←苦笑いしています
まあ上手く言い返せたら基本的に苦笑いして黙っているのが殆どです
こんな風に毎日返せたらなぁ……無理ですね泣
by algo0123
| 2023-10-30 23:48
| アジソン病